スーパーカーの歴史に触れる、ランボルギーニ博物館

歴史、食、ファッションなど、いろんな分野でイタリアは世界的に有名ですが、「車」もその1つ。車の中でも、フェッラーリを始めとするスーパーカーはイタリアならではでしょう。そのスーパーカーの3大メーカー「フェッラーリ」「マセラティ」「ランボルギーニ」すべてが、なんとエミリア・ロマーニャ州のモデナ周辺に集結しています。うちフェッラーリとランボルギーニは近年ミュージアムも設立し、世界中のファンが普段乗ることもない、見ることもかなり難しいスーパーカーを身近に感じ、夢を見させてくれる独特の空間となっています。

ミュージアムがあるのは本社の一角。門から入ると左が本社受付、右が博物館「MUDETEC=Museo delle Tecnologie(テクノロジー博物館」の入口です。スーパーカーのミュージアムだけあり、黒のかっこいい制服を着たスタッフが受付や館内のサービスを行っています。入ってすぐ左側の長い壁にある年表では、その歴史をたどることができます。創業は1963年。現在も本社とこの博物館があるサンタガタ・ボロニェーゼで事業を開始したのは、戦後すでにトラクター事業で成功を収めていたフェルッチョ・ランボルギーニです。

創業翌年には記念すべき350GTを発表し、トリノモーターショーに出品します。スーパースポーツカーというよりもリッチでレトロな車ですが、1964年当時は革新的な車だったに違いありません。320馬力を持つ12シリンダータイプのエンジンを搭載し、生産は120台のみ。1966年には内部を広くし、2+2の4シートの400GTが生まれます。
そして伝説のモデルであるミウラ。ヘッドライトや後ろは今までにない、今のスポーツカーに通じる斬新なデザイン。そして時速280キロ、6,7秒で100キロに到達するスピードは、発表当時では世界最速を誇ったそう。名前は日本の苗字でなく、スペインの闘牛に使用される牛の品種。闘牛が好きのフェッルッチョが会社のシンボルにも闘牛を使い、このモデルにも闘牛の名前をつけたのだとか。
そしてやっと1971年、スーパーカーの名にふさわしいモデル、カウンタックが誕生します。初代のLP500は展示会などで発表された後、テスト走行などでクラッシュし現物は残っていませんが、1974年発表の市販型LP400の試作品が現在ミュージアムに展示されているもの。これ、緑の色合いと言い、シートの模様といい、なんだか亀みたい、と思うのは私だけではないはず……・

2階には近年の作品が並べられていますが、壁側に並べられた黒の特別モデルが圧巻。私は気に入ったのは、2003年から続くガヤルドのスペシャルバージョン・セストエレメント=6つ目の要素という名前のついた2010年発表のモデル。周期表の元素6番であるカーボンを、車体の大半に使用していることから名づけられています。他にもチタンなど素材を厳選し、最高出力570psの5.2L V型10気筒エンジンを搭載しながら999キロという軽量に仕上げられたサーキット走行専用車だそう。マットに光るシャープなラインと、外部のアクセントや内部シートに使われた赤とのコントラストがかっこいいです。

私たちは入場チケットだけのフリー見学でしたが、予約すればスタッフのガイド付き見学も可能。フリー見学だと車内はガラス越しで見るだけですが、ガイド付きツアーだとドアを開けてもらえます。私たちは訪問時間にガイド付き見学グループがいたので、たまたまドアの開閉を見られました。更に、同敷地内にある生産ラインのガイド付き見学もあります。

ちょっとした非日常とワクワクを味わえるランボルギーニ博物館。車好きの方はもちろん、美術鑑賞や町歩き観光にちょっと飽きてしまった方にもおすすめです。


文・写真/中山久美子
日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。イタリアの美しい村30村を紹介した「イタリアの美しい村を歩く」を東海教育研究所より出版。