プラート老舗のビスコッティ「アントニオ・マッテイ」

プラート老舗のビスコッティ「アントニオ・マッテイ」

イタリアでは州や町によって伝統料理があります。料理だけでなくお菓子もバラエティに富んでいますが、トスカーナのお菓子と聞くと一番に出てくるのが「カントゥッチ―二」かもしれません。フィレンツェを始め、トスカーナ各地で生産され販売されていますが、このお菓子のもう1つの名前をご存じですか?その名も「ビスコッティ・デイ・プラート」。そう、フィレンツェのお隣・プラートのお菓子で、IGP(保護指定地域)指定も受けています。カントゥッチ―二については「小麦粉、砂糖、卵白で作った、スライスしたビスコット」と、1691年にすでにクルスカ学会の辞書に言及されているそう。当時はピサのものが有名だったそうですが、18世紀半ばからアーモンドの入りなどのバリエーションが出てきました。このアーモンド入りカントゥッチ―二のレシピは、19世紀のプラートの教養人の手書きのものが現在もプラート市古文書室に保管させているそうです。

プラート老舗のビスコッティ「アントニオ・マッテイ」

フィレンツェやシエナなどの食材店や食材コーナーには必ず、と言ってよいほど販売されているのが、このアントニオ・マッティのカントゥッチ―二。お店の本店はプラートの旧市街、コムーネ広場から目抜き通りを進んだ左側にあります。店名にもなっているアントニオ・マッテイが1858年に開業し、もともとはパンやパスタも製造していましたが、パン生地にアニスを加えた現在のビスコッティの原型が誕生。その後にか彼が発案したアーモンド入りとなり、それは1861年のフィレンツェ、そして1867年のパリの品評会などでど賞を受賞します。彼の長男に子供がいなかったため、その後は現在のオーナーであパンドルフィー二兄弟に受け継がれますが、現在まで名前はそのままに160年以上も続いている老舗です。

プラート老舗のビスコッティ「アントニオ・マッテイ」

中に入ったら正面にカウンターがあり、そこで欲しい商品を口頭で伝えます。アーモンドのベーシックなカントゥッチ―二は青、緑はピスタチオ、赤はチョコレート、と包装紙の色で中に入っている者が違います。3つどれも食べてみたい方は、3つが少しづつ入ったセットもおススメ。一番有名なのはやはりカントゥッチ―二ですが、他にもいろんなタイプのビスコッティがいっぱい~普通のスーパーにも売ってそうな朝ごはん用の袋入りのビスコッティもありました。一番有名なのは、カントゥッチ―二ですが、私が好きなのはBrutti e Buoni (ブルッティ・エ・ブォー二)、ブサイクで美味しい、というなんともストレートで面白い名前がついています。形がいびつで不揃いだからその名前がついてるのでしょうが、これまた名前通り、ホントに美味しい! 外はカリッとしていますが、中はしっとりとしたアーモンドペーストがぎっしり。ただこれは1週間以内に食べないと中のペーストが固くなってくるそう(賞味期限的には問題なしです)。

プラート老舗のビスコッティ「アントニオ・マッテイ」

2018年には、ブランド通りとして知られるトルナブォー二通りからひとつ入った路地にフィレンツェ店がオープンしました。工房ミュージアムという名の通り、カウンターの左奥の階段を上がると、マッテイ家のサロンともいうべき空間となっています。マッテイ家や開店当時の店の写真パネル、賞状、かつての製造機械など。そしてミュージアム限定缶などの特別グッズも販売しているので、お土産にもぴったり。

プラート老舗のビスコッティ「アントニオ・マッテイ」

時間のない方はフィレンツェ店へ、時間のある方は穴場観光地でもあるプラートで本店へも。今に受け継がれる老舗店の魅力と味をぜひ堪能してください。


文・写真/中山久美子
日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。イタリアの美しい村30村を紹介した「イタリアの美しい村を歩く」を東海教育研究所より出版。