トラジメーノ湖を一望!ウンブリアの美しい村・パッシニャーノ
私が住むトスカーナ州の南東のお隣はウンブリア州。「イタリアの緑のハート」とも呼ばれる、自然豊かな中に州都のペルージャをはじめ、歴史ある美しい都市や村が点在しています。近年は仕事でウンブリアに行くことも多く、その合間にライフワークである美しい村巡りも。これから3回に渡り、まだ日本ではほとんど知られていないウンブリアの美しい村をご紹介します。
ひとつ目は、パッシニャーノ・スル・トラジメーノ。名前の通り、ウンブリア州最大の湖・トラジメーノ湖畔にある小さな村です。電車だけで行くことができ、鉄道駅から旧市街も徒歩で10分かからないアクセスの良さ、そして何よりもトラジメーノ湖の眺望が一番の見どころです。
鉄道駅を出て右へひたすら歩いていくと、右側に公園とその奥に湖が見えてきます。そのまままっすぐ行っても村に到着しますが、公園を通って湖沿いの遊歩道を歩くのがおススメ。天気が良い日はマッジョーレ島を眺めつつ、心地よい風に吹かれながら歩くのはなんとも気持ちの良いものです。もともと漁師の村というだけあり鯉やウナギなどの淡水魚が食べられるレストランもあります。
そこから5分もしないうちに、今度は湖と逆側に時計の塔が目印の村が見えてきます。この塔の建設は13世紀、先に建設された要塞と同様に防衛目的で建てられました。要塞より後に建てられたこと、また外から塔に直接アクセスできる入口がないことから、攻撃にあった場合の最終籠城の場所として使われていたとされています。
この広場から村の中に入るもよし、湖沿いの他の道から入るもよし。石造りの建物に今も住民の営みが感じられる、穏やかな町並みにほっこりとした気分になります。
そこからは「ROCCA(要塞)」の標識をたどり、上へ上へと上っていくだけ。とはいえ、村はとても小さいので、あまり気にせずあてもなく散策するのも楽しいです。
要塞の起源はロンゴバルド時代の5~6世紀。その後、11世紀にこの地を治めていたトスカーナの貴族は城壁を建て、続いてペルージャ統治になってから今も残るこの要塞が建設されました。度重なる増築を改築を経て、時代とともにその所有者も変わりました。第二次世界大戦での爆撃により大きな損傷を受けましたが、修復の後、2008年から一般公開が開始。内部には船の博物館、入口にはこの地の特産物の販売所もあり、カフェも楽しめます。そして一番の見どころは、やはり要塞上から眺める絶景です。
私が訪れた日は最高のお天気で、マッジョーレ島だけでなく湖の対岸の地まで広く見渡すことができました。眼下にはレンが色の村、そして東には港、360度の素晴らしいパノラマを堪能することができます。
ちなみにトラジメーノ湖ではフェリーも出ていて、マッジョーレ島や西の湖畔の村トゥオーロ・ナヴァッチャ、南西の湖畔の村カスティリオーネ・デル・ラーゴ、南の湖畔の村サン・フェリチャーノへ行くことができます。そして後者2つを経由して、トラジメーノ湖最大の島ポルヴェーゼ島へも。ポルヴェーゼは港近くに美味しいレストランがあり、また湖畔ビーチで湖水浴を楽しんだり、トレッキングしながら要塞を見学したり、楽しめるアクティビティもたくさん。緑の山のイメージがあるウンブリアですが、美しい村が点在するトラジメーノ湖だけでも見どころがたくさんあります。電車で簡単にアクセスできる、このパッシニャーノを起点にぜひ湖の滞在を楽しんでくださいね。
文・写真/中山久美子
日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。イタリアの美しい村30村を紹介した「イタリアの美しい村を歩く」を東海教育研究所より出版。