ピアチェンツァ大聖堂の内部

ピアチェンツァ

【第十話】イタリア巡礼路を辿る†~魂を彩る神聖な旅~

Via Francigenaを巡る旅、今度はエミリア・ロマーニャ州にも目を向けてみましょう。今日ご紹介するのは、ピアチェンツァ(Piacenza)。エミリア=ロマーニャ州の重要な都市であり、ポー川の南側に広がるこの街は、紀元前218年にローマによって植民地として設立されました。ローマ人はこの地を「Placentia(プラケンティア)」と名付け、ここを北イタリアの支配の拠点としました。中世になると、ピアチェンツァはロンバルディア同盟に参加し、神聖ローマ帝国に対抗する都市国家の一部として活動しました。その後もピアチェンツァは幾度かの戦争と支配者の交代を経験しつつも、ヴィア・フランチジェナ沿いの街であったことが有利に働き、数世紀にわたって重要な商業と交通の中心地として栄えたのだと言われています。今もなお歴史的な建築物や遺跡が多く残るこの街は、その過去の栄光を物語っているといえるでしょう。そんなピアチェンツァの見どころをもう少し一緒に探っていきましょう。

ピアチェンツァは、4世紀ごろにはすでにキリスト教が浸透していた都市の一つ。この時期、多くのローマ帝国の都市がキリスト教を受け入れ始めており、ピアチェンツァも例外ではありませんでした。早い時期から司教座が置かれ、重要な宗教的中心地となったピアチェンツァ。特に注目すべきは、4世紀に初代司教となったサヴィーノ(San Savino)の存在です。彼は街のキリスト教化に大きく貢献し、サン・サヴィーノ教会の創建に関与したのだそう。この教会は、現在も彼の名を残し、美しいモザイクやフレスコ画が飾る内部は一見の価値があります。
中世には、ピアチェンツァは巡礼地としての重要性を増しました。特に11世紀から12世紀にかけて、多くの巡礼者がヴィア・フランチジェーナを通ってローマを目指す中で、この街に立ち寄ったのだそうです。ピアチェンツァには数多くのホスピス(巡礼者の宿泊施設)が建てられたようで、そのいくつかは現在も遺跡として残っているのを見ることができます。
街に数ある教会の一つ、サン・シスト教会(San Sisto)は、ピアチェンツァにおけるルネサンス建築の代表例であり、その豪華な内装とともに多くの人を魅了する建物です。サンタ・マリア・ディ・カンパーニャ教会(Basilica di Santa Maria di Campagna)もまた、ピアチェンツァにおけるキリスト教芸術の頂点を象徴するとも言える場所で、この教会は16世紀に建てられ、内部にはピアチェンツァ出身の画家イル・モレッタ(Il Morazzone)による美しいフレスコ画が描かれています。特に、聖母マリアの生涯を描いた一連の絵画は必見です。

Piacenza

ピアチェンツァにはまだまだ多くの歴史的建造物や美術館があります。街の中心に位置するドゥオーモ(Piacenza Cathedral)は、この街を訪れたなら必ず見ていただきたい場所の一つ。12世紀に建設されたこの大聖堂は、ロマネスク様式とゴシック様式が融合した壮大な建築で、内部には美しいフレスコ画が施されています。また、ドゥオーモの地下には古代ローマ時代の遺跡が保存されており、深い歴史を感じさせてくれることでしょう。
教会の他に、いくつかの邸宅(Palazzo)もぜひご覧いただきたいものです。5つのアーケードとファサードが特徴的なパラッツォ・コムナーレ( Palazzo Comunale)。2代目パルマ公およびピアチェンツァ公のパラッツォ・ファルネーゼ(Palazzo Farnese)は、16世紀に建てられた壮大な宮殿です。現在はピアチェンツァ市立博物館として利用されており、中世から近代にかけての貴重な美術品や歴史的遺物が展示されています。パラッツォ・ファルネーゼの庭園の、美しい景観と静かな雰囲気が訪れる人を癒してくれるでしょう。

Piacenza

ピアチェンツァは歴史、文化、宗教が交差する魅力的な街です。古代から現代に至るまで、キリスト教の影響が色濃く残り、訪れる人々を引きつけてやみません。この街を歩けば、過去と現在が融合する瞬間を感じることができるのではないでしょうか。イタリアを愛する人々にとって、ピアチェンツァは必見の場所です。ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。

文責/アドマーニ