サンミニアート
【第四話】イタリア巡礼路を辿る†~魂を彩る神聖な旅~
Via Francigenaを巡る旅。サンジミニャーノに続き、次なる目的地はトスカーナの美しい町、サンミニアートです。美しいトスカーナの丘陵地帯に位置し、青々としたブドウ畑や銀色に輝くオリーブの木々が、緑の丘に織りなすまさに絵画のような絶景を見ることができるこの小さな町は、アルノ川とエラ川の合流点に位置し、中世の古き良き雰囲気が漂います。サンミニアートは、Via Francigenaの巡礼者たちにとって、静かなる休息の場として、かつての古代巡礼者たちにとってのように、安らぎと平穏をもたらす場所と言えるでしょう。そんなサンミニアートについて今日は少し詳しく見てまいりましょう。
サンミニアート(San miniato)、6世紀の聖人ミニアトゥスにちなんで名付けられたこの街の歴史は古く、エトルリア人にまで遡ることができると言われます。中世にはその繁栄を極めたフィレンツェ共和国の支配下に入り、ルネサンス期には芸術と文化も栄えたと言われています。街の名前の由来となった聖ミニアトゥスという人物は、3世紀後半から4世紀初頭にかけて生きたとされる聖人で、ローマ帝国時代のローマ市民でありながらキリスト教の信仰を貫いた殉教者として知られているのだそう。彼の生涯についての詳細は不明な点が多いものの、伝承によれば、彼はローマの迫害を逃れるため山中に隠れ、そこで祈りを捧げる生活を送っていました。しかし、迫害者に発見され、苦しい拷問の末に殉教したものの、実際には生きており、その後自らの遺体を持ち上げ、山の上に登ってそこで再び死亡したのだという説もあるのだそう。この聖人の名前を持つ教会が、フィレンツェのミケランジェロ広場の近くにあるので、こちらにもぜひ訪れていただきたいもの。美しいロマネスク様式のサンミニアートアルモンテ教会は11世紀に建てられ、トスカーナ地方でも特に優れた建築物の一つとされています。天井描かれた美しいフレスコ画や壁面の豪華な彫刻や装飾は圧巻です。
サンミニアートの街のシンボルと言える背の高い建物を二つご紹介しましょう。まず一つは「フェデリコ2世の塔」。12世紀から13世紀にかけて建てられ、当時の要塞として周囲の土地を監視し、防衛する役割を果たしました。現在の塔は、第二次世界大戦中にドイツ軍によって爆撃を受け、その後1958年に修復されたものですが、高さは37mあり、ここからはアルノ渓谷の下流やヴォルテッラの方まで見渡すことができます。現在もこの塔はサンミニアートの街のランドマークとして残っており、観光客や歴史愛好家にとって興味深い見所の一つとなっています。もう一つは「マティルデの塔」。サンミニアート大聖堂の近くに建ち、おそらく 12 世紀に建てられたと思われるこの塔は、カノッサのマチルデが近くの宮殿で生まれたという伝説があるため、そのように呼ばれているんだとか。1489年の改修でマティルデの塔は大聖堂に接続されたのだそうです。
トスカーナの美食文化に違わず、この街もまたグルメを楽しめる場所であることにも触れておきましょう。特にトリュフが豊富にとれるということをご存知でしたでしょうか。白トリュフといえば、ピエモンテ州アルバの名前を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実はサンミニアートもまたアルバと並ぶ白トリュフの名産地なのです。毎年11月には、白トリュフの祭典が開催され、世界中から食通たちが集まります。この祭りでは、トリュフを使った料理やワイン、地元の手工芸品などが楽しめます。地元のワインやオリーブオイルと一緒にサンミニアートの魅力をより味わうことができそうですね。
サンミニアートはフィレンツェから車や電車で約一時間。トスカーナの美しい風景と豊かな歴史、そして美味しい食べ物を楽しむことができる場所です。中世の町並みや建造物、そしてトリュフの祭典など、トスカーナを代表する都市であるフィレンツェやピサに隠れてしまいがちですが、ここもまた訪れる価値のある魅力の詰まった街なのです。その美しい景色と心温まる雰囲気が、新たな旅の思い出を彩ることでしょう。
文責/アドマーニ