フィデンツァ

フィデンツァ

【第十三話】イタリア巡礼路を辿る†~魂を彩る神聖な旅~

イタリア北部のエミリア=ロマーニャ州には、まだまだ魅力的な街がたくさんあります。ボローニャとミラノを結ぶ重要な鉄道路線に位置するフィデンツァもまた、今もなお多くの旅行者にとってそうであるように、Via Francigenaを行く巡礼者たちにも人気の訪問先であったことでしょう。この街は、古代ローマ時代に遡る豊かな歴史と、美しい大聖堂をはじめとする見どころを多く持っています。今日はこの街の魅力を深掘りしていきたいと思います。

フィデンツァ


Saint Domninus of Fidenza

フィデンツァは、ガリア人が築いたヴィクムヴィアという名の集落にローマ帝国が設営した野営地に端を発すると言われています。ローマ名では「フィデンティア」と呼ばれ、周囲よりも標高が高かったこともあり、エミリア通り沿い、スティローネ川に架かる橋の検問所としてローマ帝国の北方拠点として重要な役割を果たしていました。中世に入ると、フィデンツァはカトリック教会の重要な拠点として発展を遂げます。特に11世紀には、カンタベリー大司教であり、後に聖人となった聖ドンニーノ(San Donnino)が殉教した地として知られ、巡礼者たちが集まる場所となりました。Borgo San Donnino(聖ドンニ―ノ郊外地区)と呼ばれ、聖ドンニーノに捧げられたフィデンツァ大聖堂(Cattedrale di Fidenza)は、ロマネスク建築の傑作として名高く、現在でもその美しさは健在です。度重なる征服・支配・解放の歴史を繰り返したこの街は、フランスによる支配やイタリア初のファシスト党設立を経て1927年に、フィデンツァと改名されました。

フィデンツァ大聖堂の外観には精巧な彫刻が施されており、その壮大さに圧倒されます。特に、正面ファサードの彫刻は、中世における宗教的なシンボルや物語を描いており、聖書に基づく場面が緻密に再現され巡礼者や町の人々に聖書を説明する役割を担っていたようです。聖ヤコブの巡礼路(Camino de Santiago)の一部としても知られるこの大聖堂は、長い間、信仰の拠点として巡礼者たちを受け入れてきました。大聖堂の内部には、美しいフレスコ画や中世の宗教美術が多数展示され、聖ドンニーノの聖遺物が崇拝されていることから、常に巡礼の場となっているのです。大聖堂の隣に立つ、ヴィスコンティの塔(La Torre Viscontea)に登れば、フィデンツァの街を見渡し、ローマ時代の名残を見ることもできるでしょう。

フィデンツァ

現代のフィデンツァもまた、ショッピングやグルメを楽しむ場所として魅力的です。街の中心部から少し離れた場所には、フィデンツァ・ヴィレッジ(Fidenza Village)という大型のアウトレットモールがあります。このモールは、イタリア国内外の有名ブランドが多数出店しており、買い物好きにはたまらないスポットです。モール内には、美しいイタリアの街並みが再現されており、この場所にいるだけでショッピングを楽しみながらイタリア中の雰囲気を味わうことができることまちがいなし。また、レストランやカフェも充実しており、地元のエミリア=ロマーニャ地方の料理を堪能できるのも魅力の一つです。
フィデンツァでレストランを訪れたなら、トルテッリーニやラザニアなどのエミリア=ロマーニャ地方の伝統的なパスタ料理はもちろんのこと、地元のワインである「フランチャコルタ」も一緒にぜひともお楽しみください。フィデンツァ周辺にはワイナリーも多く、ワインツアーに参加して地元のワイン造りのプロセスを学ぶのも一興ですね。

フィデンツァ

芸術や文化活動も盛んなこの街には、現代アートのギャラリーや美術館が点在しています。フィデンツァ・アート・フェスティバルや、年間を通じて音楽コンサートや演劇など、さまざまな文化イベントが開催されるので、フィデンツァを訪れる際には、こうしたイベントに参加するのも楽しいですね。2~3時間で主要な名所を見て回れる小さな町ですが、歴史を感じ、美味しい料理を楽しみながらショッピングや芸術も楽しめる、魅力のたっぷりつまったフィデンツァ。ミラノからちょっと足を伸ばしてぜひ訪れてみませんか?

文責/アドマーニ