世界遺産の大聖堂、モデナ

エミリア街道をゆく② 世界遺産の大聖堂、モデナ

エミリア=ロマーニャ州を東西に走る、エミリア街道沿いの町を紹介するシリーズ第2回目はモデナ。前回に紹介した州都ボローニャから西へ電車で30分という近さで、ボローニャと同じく柱廊が連なり、レンガ色で統一された美しい町です。ボローニャから至近といえど、モデナだけにしかない、モデナの名を世界に知らしめるものがたくさんありますが、一番はなんと言っても世界遺産にも指定されているドゥオモではないでしょうか。

モデナのドゥオモの正式名称は、サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂。町の守護聖人であるジェミニアーノの遺体が収められ、モデナ出身の偉大なオペラ歌手・パバロッティの葬儀もここで行われました。建設は1099年から始まりましたが、完成したのは約300年後の1389年。ヨーロッパを代表するロマネスク様式の建築とされていますが、建設を任された建築家・ランフラスコの設計通りになっているわけではありません。たとえばファサードの美しいバラ窓は、13世紀になってから付け加えられたもの。美しい白の大理石の外観とは裏腹に、内部はレンガ造りのうえ照明がおさえられているために重厚な印象があります。その中に浮かび上がるゴシック様式の高いヴォールト天井やアーチ、主祭壇上の黄金のモザイク、説教壇などに見られる大理石のレリーフが見事です。

グランデ広場

ドゥオモ前の広場は意外と小さいのですが、逆にファサード向かって右奥は世界遺産でもあるグランデ広場が広がっています。ドゥオモの鐘楼(市民の塔、またはギルランディーナの塔)は大聖堂と同じくランフランコの設計で1179年に完成し、82.16mの塔の上からはモデナの町を一望することができます。広場の一角にあるのはモデナの市役所。この地下にはモデナを代表する特産物であるバルサミコ酢の醸造所が2003年に設置され、毎週金~日曜日にはガイド付き見学とテイスティング(要予約)が開催されています。土曜日は英語の回もあるので、興味のある方はぜひ訪問してみてください。

ドゥカーレのラード

そんなバルサミコ酢は、モデナの飲食店でメニューに必ず登場します。私がモデナを訪れた時に入ったドゥオモ近くのビストロでは、「ドゥカーレのラード」と呼ばれるマイルドな生ハムとルーコラ、バルサミコ酢を合わせた一皿が絶品でした。合わせたのは、豚の脂入りのモデナのパン・ティジェッラと、エミリア・ロマーニャを代表する発泡ワイン・ランブルスコ。ランブルスコは品種や甘味によって様々な種類があるので、料理に合わせる時はスタッフに相談すると良いでしょう。

生ハムの名前にもなっているドゥカーレは、「大公」の意味。ロンゴバルド王国を経て12世紀に自由都市となったモデナは、13世紀の末にエステ家の統治となり、1452年には神聖ローマ皇帝によりモデナとレッジョの公爵に任命されたことから公国となります。1796年まで続くエステ家の統治下では宮殿の建設など市が大きく発展し、今も残るドゥカーレ宮(現在は陸軍士官学校)や、エステ家の美術品を集めたミュージアムなど、ゆかりの場所が今も残っています。

エンツォ・フェッラーリ生家博物館

他にもオペラ好きの方は市民劇場前にあるパバロッティ像を拝みに、車好きの方はモデナ生んだスーパーカーの父、エンツォ・フェッラーリ生家博物館も。歴史的建造物に美術だけでなく、食や音楽、車まで幅広い魅力をもつモデナ。フィレンツェやミラノから日帰りでも行けなくもないですが、モデナまたはボローニャなどの近郊都市に宿泊してゆったりと周ってみてください。

エンツォ・フェッラーリ生家博物館

日伊通訳・コーディネイター。2001年にフィレンツェ留学、結婚ののち、2005年よりトスカーナ北部の田舎に在住。トスカーナの小さな村、郷土料理やお祭り、料理教室などのプログラムを紹介するサイト「トスカーナ自由自在」を運営。著書に「イタリアの美しい村を歩く」、「イタリア流。世界一、人生を楽しそうに生きている人たちの流儀」など。