アブルッツォの歴史と今

アブルッツォの歴史と今

「Abruzzo(アブルッツォ州)」。イタリア好きの方でも「どこだっけ?」と思われる方は多いのではないでしょうか。それもそのはず、日本で発売されているイタリアのガイドブックでは、ほとんど取り上げられることがない州だからです。

アブルッツォ州は、イタリア半島を縦断するアペニン山脈の中央部からアドリア海に広がり、 西は首都ローマがあるラツィオ州、北はマルケ州、南はモリーゼ州と隣接しています。ラクィラ、キエティ、ペスカーラ、テラモの4つの県からなり、総人口は約129万人(2020年1月 )。州都はラクィラ市です。地理的には中央イタリアに位置していますが、文化・言語・歴史・経済の観点からは、南イタリアとして分類されることもあります。

2009年に起きたラクィラの大地震は、残念なことに300名以上の死者、6万人以上が家を奪われるという大被害を被りました。歴史的な町である事により古い建物が多く、しかもそのほとんどが石造であることにより復興作業は容易くなく、別の町へと移り住んだ人も多かったそうです。そんな背景もあり、最近では、国際空港も構える人口12万人のペスカーラ県が、州の中心的な役割を果たすことも多くなっています。

アブルッツォの歴史

アブルッツォの歴史と今

アブルッツォという名前は、ラテン語の「Aprutium(アプルティウム)」からなり、現在のテラモ県付近に存在していた氏族に由来していると考えられており、州内の多くの都市で、新石器時代 には人々の生活がすでにあったという遺跡が残っています。
紀元前2世紀頃には、ローマ帝国によりテラモが支配され、 他のアドリア海の都市へつながる道路整備を通じ、首都ローマに近接する自治体として、大成功を収めました。このおかげで、テラモでは現在も、円形劇場や浴場、寺院など、豪華な遺跡を目にすることができます。
ローマ帝国崩壊後は、イタリアの他の地域と同様に、さまざまな文明に支配されましたが、中でも最も重要な影響を与えたのは、1860年にノルマン人によるイタリア統一への第一歩であるシチリア王国に、この地域が含まれていたことです。その頃は、南に隣接するモリーゼ州と共に「Abruzzi(アブルッツィ)」と呼ばれており、1963年にモリーゼ州が独立するまで、その名で呼ばれていました。

「大自然に恵まれたアブルッツォ」

アブルッツォの歴史と今

「ヨーロッパで最も緑豊かな地域」や「緑の州」と呼ばれる通り、州の総面積のほぼ半分が、国立公園や自然保護区として認定されています(国立公園3、州立公園1、自然保護区38)。中でもアブルッツォ国立公園は、ヨーロッパで5本に指に入る美しい国立公園と言われており、熊、狼、イノシシ、白いキツツキ、イヌワシなど、絶滅の危機に瀕する貴重な動植物の保護に力を入れています。
「Grand Sasso(グラン・サッソ)」は、アペニン山脈で最も高い山塊で、「大きな岩」の名の通り、ゴツゴツとした岩肌が特徴的です。最高峰のコルノ・グランデ(2,914m)の山頂は一年を通して雪に覆われており、コルノ・ピッコロとの間には、ヨーロッパ最南端の氷河が残っています。

アブルッツォの歴史と今

一方、南北に真っ直ぐ伸びるアブルッツォ海岸は、全長133km。夏になると、イタリア国内のみならず、西ヨーロッパや北米からの観光客で賑やかになるリゾート地です。「Trabucco(トラブッコ)」と呼ばれる足高の伝統的な漁師小屋が、このビーチをさらに特徴的な外見へと演出しています。現在では、その内の数カ所はレストランへと改装されており、海上数メートルで新鮮な海鮮ディナーをいただけるという、なんとも贅沢な時間と空間を提供してくれています。ローマから車で2〜3時間、1日に20便前後の高速バスの発着がある利便性を生かし、都会に住むイタリア人のオアシスとして、近年その人気を一層高めています。日帰りやショートステイで、ハイキングやバードウォッチング、野草鑑賞、冬にはスキーやスノーボードなどが楽しまれています。

「山の幸も海の幸も」

アブルッツォの歴史と今

「イタリア国民全員が羨ましがる」とアブルッツォ州民たちが誇るのが、「Arrosticini(アロスティチーニ)」。羊肉の串焼きです。日本の焼き鳥よりも少し小ぶりなサイズで 、味付けはシンプルに塩コショウのみ。どこのレストランでも1本1ユーロで、通常は大体一人10本単位でオーダーし、冷めないようにツボに入れられて提供されます。アブルッツォでのバーベキューといえば、もちろんこれ。多くの家庭で、専用のグリルを持っています。

 
アブルッツォの歴史と今

 「Spaghetti alla chitarra(スパゲッティ・アッラ・キタッラ)」は、この地域の特有のパスタです。「キタッラ」とはギターのことで、弦を張ったような金属の枠を使い、押し切って成形された細長い麺が特徴です。牛肉のミートボールを、じっくりとトマトソースで煮込んだものと合わせていただきます。黒ブドウ由来の濃厚かつ甘い香りで有名なワイン 「モンテプルッチャーノ・ダブルッツォ」は、州の名前が堂々と冠されています。また、ラクィラ県は、国内有数のサフラン産地としてDOP(原産地名称保護制度)の認定を受けています。他にも、羊や山羊のチーズ、サラミ、オリーブオイルの生産、エビやシャコの漁獲など、山と海に囲まれた自然豊かなアブルッツォ州は、その特性を生かした食の宝庫でもあります。

アブルッツォの歴史と今

ローマにお越しの際は是非、半日もしくは1日その滞在を延長し、アブルッツォ州へ足を伸ばしてみるのも、必ず素敵な思い出の一つになるでしょう。有名観光地とはまた別の美しさを、そして改めてイタリアという国の豊かさを、再発見できますよ。

文責/アドマーニ