ポントレーモリ:歴史と文学が息づく「揺れる橋の町」

【第十五話】イタリア巡礼路を辿る†~魂を彩る神聖な旅~

トスカーナ州北部、アペニン山脈の麓に広がるポントレーモリ(Pontremoli)。その名はラテン語で「揺れる橋」を意味する「Pons Tremulus」に由来すると伝えられています。石畳の道、古い橋、そして自然が織り成すこの町は、フランチジェナ街道を行く巡礼者にとって特別な休息地だったに違いありません。今回はその魅力あふれる歴史と文化を深く掘り下げてみましょう。

ポントレーモリを包むアペニン山脈は、何世紀にもわたり町の風景と生活に深く影響を与えてきました。緑豊かな山道を歩くと、巡礼者や商人たちが行き交った歴史の足跡を感じられるよう。町の旧市街に足を踏み入れると、中世の雰囲気が色濃く残る風景が広がります。石畳の道を進むと目に飛び込むのは、かつて町を守った要塞ピアニョーネ城(Castello del Piagnone)。現在では「ステッレ・ステレ博物館(Museo delle Statue Stele)」として、紀元前3000年頃の石造彫像など、地域の考古学的遺物が展示されています。城の塔から眺める町の景色は壮観で、かつて巡礼者たちがこの地を訪れた理由を感じることができるでしょう。

ポントレーモリの中心部には、町を象徴する建築物、サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂(Cattedrale di Santa Maria Assunta)があります。この大聖堂は17世紀に建設され、バロック様式の華やかさと威厳があり、中に入ると高くそびえる天井や壮麗な祭壇に目を奪われます。聖母マリアの昇天を描いたフレスコ画の美しさは必見。地元の人々にとってこの大聖堂は、単なる建築物ではなく、町の精神を象徴する場所といっても過言ではありません。

ポントレーモリを訪れる巡礼者にとっては、他にも旅のハイライトとなるであろう場所がまだいくつかあります。18世紀に25の名門貴族の協力によって建てられた、優美なロココ様式のローズ劇場(Accademy of the Rose Theatre)。サン・フランチェスコ教会と修道院(Church and Convent of San Francesco)では、アゴスティーノ・ディ・ドゥッチョの「聖母子」の浮彫や、ルキーノ・ダ・パルマが手掛けた木彫の聖歌隊席、ジャンベッティーノ・チニャローリの描いた「サン・フランチェスコのエクスタシー」など、宗教芸術の傑作を見ることができます。そしてサン・ピエトロ教会(Church of San Pietro)は、ポントレーモリからアウッラへと続く第23区間に位置する、町で最も古い建物の一つです。何世紀にもわたって旅人たちを迎え入れてきたその石造りの壁は、無数の巡礼者がここで祈りを捧げていたことを語りかけてくるようです。

ポントレーモリにもこの地方独特の料理があるのをご存知ですか?この地の名物テスタリオリ(Testaroli)は、最古のパスタの一つなんだとか。パンケーキ状の生地を切り分け、ペストソースやオリーブオイルで和えていただくこの料理は、シンプルながらも深い味わいを楽しめます。地元の赤ワインとともにぜひ召し上がってみてください。

そしてもう一つ、ポントレーモリは文学の町としての特徴があることも忘れてはなりません。毎年夏に、「バンカレッラ賞(Premio Bancarella)」という文学賞が開催され、多くの作家や文学愛好家が町に集うのだとか。この賞は1953年に創設され、イタリアの本屋の店主がその年の最も優れた書籍を選ぶというユニークな形式のもの。町に集まった本の行商人たちが、情報交換をしていたのがこの賞の始まりだと言われています。授賞式の日には、町全体が文学一色に染まり、広場には露店形式の本屋が並びます。賑やかな雰囲気の中で書籍を手に取り、文学と触れ合う特別な体験を楽しむことができるのですね。皆さまもこの「揺れる橋の街」で、ご自身の旅の物語を紡いでみてはいかがでしょうか。

文責/アドマーニ