フィオレンツォーラ・ダルダ

フィオレンツォーラ・ダルダ

【第十一話】イタリア巡礼路を辿る†~魂を彩る神聖な旅~

Via Francigenaを巡る旅、前回のピアチェンツァに続き、この県に属する都市の一つを今日は覗いてみましょう。街の名前は、フィオレンツォーラ・ダルダ(Fiorenzuola d’Arda)。ラテン語の「Florentia」に由来しているそうです。「Florentia」とは、「花が咲く場所」や「繁栄する場所」という意味があり、イタリアの中でも人気の高い街フィレンツェが中世・ルネサンスに芸術や文化で栄えた「花の都」と呼ばれるように、この街もまた、都市や町が成長し、豊かであることを願って付けられたのかもしれません。エミリア・ロマーニャ州にあるこの街は、さらにアルダ川の「d’Arda」という名前を加え、地理的な特徴も表しています。

フィオレンツォーラ・ダルダの歴史は古く、イタリアにおける先史時代にまでさかのぼることができるのだそうです。古代ローマ時代の280年ごろまでは小さな村落だったこの街にガリア人がやってくると、次第に重要性を増していき、その後744年ごろにはフランク王国によって征服されました。フランク王国の勢力が拡大するにつれ、フィオレンツォーラ・ダルダは重要な存在となっていきます。そしてフランク王国が分裂すると、イタリア北部は都市国家が分立する時代を迎え、この時期のフィオレンツォーラ・ダルダは、パルマ公国とピアチェンツァ公国の支配下にあるものの、両党派から独立した「中間の郡」として発展し、地域の重要な拠点となりました。

フィオレンツォーラ・ダルダ

フィオレンツォーラ・ダルダ歴史の重みを感じさせる見どころもたくさん。街の中心にある広場には、大きな時計塔を持つ壮麗な聖堂がそびえ立ち、その姿は街のかつての繁栄を物語っています。フィオレンツォーラは、芸術と宗教が交錯する特別な場所でもあり、ピアチェンツァ出身の著名なオペラ作曲家ジュゼッペ・ヴェルディにちなんで名付けられたヴェルディ劇場(Teatro Verdi)は、その象徴とも言える存在です。さらに、宗教的な遺産も見逃せません。聖フランシスの教会や、アッシジの聖フランチェスコ聖堂、そして8世紀のキリスト教宣教師であり、フランク王国にキリスト教を広めた聖ボニファーチョの記念碑など、歴史的価値の高い建造物が点在しています。聖ボニファーチョとは8世紀のキリスト教宣教師で、フランク王国にキリスト教を布教したとされ、カトリック教会を始め、正教会やルーテル教会、聖公会でも崇拝される聖人です。この聖ボニファーチョがイタリアのこの地域にも大きな影響を与えたのだそうです。彼に捧げられた教会もまた824年頃に建てられています。ただ、この教会はその後、1273年に名前を変えて再建されたと記された文書が見つかっているそうです。ロマネスク様式の聖堂も改修を経て17世紀にはバロック様式に。地下室には今も聖ボニファティウスに捧げられた祭壇が残っているのだとか。歴史と信仰を大いに感じられるこの街は、フランチジェナ巡礼路を行く巡礼者たちにとっても特別な場所であったことでしょう。

フィオレンツォーラ・ダルダは、その豊かな歴史だけでなく、美しい自然環境も大きな魅力です。街の周辺には、穏やかな丘陵地帯が広がり、アルダ川の流域に沿った風景が訪れる人々を癒します。アルダ川は、その静かな流れと豊かな自然により、散策やピクニックに最適な場所を提供します。また、この地域はアウトドア活動にも恵まれており、ハイキングやサイクリングなどのアクティビティが人気です。特にサイクリングは、7月に開催される「Sei giorni delle Rose」(セイ・ジョルニ・デッレ・ローゼ)の自転車ロードレースで、街全体が一層活気づきます。このレースを観戦しようと多くの観客が集まり、レースの期間中の街は観光客や選手で賑わい、フィオレンツォーラ・ダルダのエネルギッシュな一面を体感できるかも。
ポー川の支流であるアルダ川のほとりにある美しい聖堂の集まる街フィオレンツォーラ。ミラノから1時間半ほどで行けるこの街で、都会の喧騒を離れて静かなひと時を過ごしてみるのはいかがでしょうか。

文責/アドマーニ